インスペクションとは何か?
inspectionとは直訳すると「建物診断」です。ホームインスペクションとは、「住宅診断」と訳すのが一般的ですが、最近中古住宅のためにこの建物診断が重要な仕事として、不動産業界や住宅業界で俄然注目を集めています。なぜインスペクションが必要なのでしょうか?今日はその必要性について解説します。
目次
国土交通省が中古住宅に義務化、閣議決定
2016年1月10日、国土交通省は中古住宅の売買契約時に、住宅診断の確認を不動産仲介業者に義務付けるという内容を盛り込んだ宅地建物取引業の改正案が提出し、2月26日閣議決定されました。
なぜ法律によって義務付けるまでに、インスペクションが必要だとされているのでしょうか?国土交通省はその背景に背景について以下のように述べています。
我が国が本格的な人口減少・少子高齢社会を迎える中、国民資産である住宅ストックの有効活用、既存住宅流通市場の拡大による経済効果の発現、ライフステージに応じた住替えの円滑化による豊かな住生活の実現等は重要な政策課題となっています。一方、我が国の既存住宅の流通量は、年間17万戸前後の横ばい状態で推移しており、このように既存住宅流通が増加しない要因の一つとして、消費者が住宅の質を把握しづらい状況にあることが挙げられます。このため、宅建業者が、既存住宅の取引時において、専門家によるインスペクションの活用を促すことにより、消費者が安心して既存住宅の取引を行える市場環境の整備を図ります。
「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」を閣議決定
わかりにくい文章が続きますが、要するに国土交通省としては日本の住宅業界は依然として新築建築重視の傾向で、いっこうに中古住宅流通市場が活性化しない。その原因は消費者が中古住宅の把握しづらい状況にある。 だから 中古住宅の質を明らかにしようとインスペクションの義務付けを行うということなのだと思います。
インスペクションは価値判断の情報を提供
ホームインスペクションとは既に完成している住宅もしくはすでに人が何年も住んでいた既存住宅について消費者がその住宅の価値を判断するための情報を提供するものです。
一旦完成した建物は完成した直後から 風雨や太陽光にさらされる自然環境に身を置くことになります。
今までは中古住宅においてそのような風や太陽光などの自然災害によってどれだけの住宅が劣化しているか痛んでいるかということはあまり注目が置かれていませんでした。建物が風で押されて変形し、 防水層 が破れて雨水が内部に入り込むかもしれません .雨水が建物に入ればそれは雨漏りとなり内装を汚している可能性もあります。
インスペクションの結果よくわかることですが 雨水が壁の中など見えない部分に入り込んでいたり構造上主要な部分である木材を腐らせたり鉄骨を錆びさせたりしている場合があります。
以下インスペクションによって得られるメリットを書いてゆきます。
①瑕疵担保トラブルを回避する
どのような劣化状態かよくわからない住宅を、 仲介業者は売主は担保責任を負わないという特約を結んで契約をすることが 不動産業界ではよくあります 。契約後1年以内に買主がインスペクションを行い、その結果このような 構造上の欠陥を知ったら 、売主は瑕疵担保責任を負わなければなりません。(1年後なら民法上は瑕疵担保責任がありませんが、トラブルの元になります。)
契約の後に、このような状態が知られるなんて、売主にとっても買主にとっても非常に面倒なことになってます。事前にインスペクションを行なっていれば、売買を前提に修理もできますし、買主は修理したという事実を確認して安心して、不動産を購入できるのです。
②売れる不動産物件になる
特に中古住宅に関してはこのような情報が今まで公表されることはありませんでした。
この原因は日本の住宅市場は長期間にわたって、売主や大家さんの意見が強く反映される、「売り手市場だった」ということが原因として考えられます。しかし、その「売り手市場」状態は、完全に失われています。東京都内は別にして、全国の空き家は2014年現在、13.5%に達しています。(総務相調べ)
市場は供給過剰の完全買い手市場になっているといえます。ですから売主や大家さんは情報を隠すより、正々堂々と公開して、買い手の要望を聞きながら、できる限りの要望に応える事が、売れる不動産の鉄則になります。そのための情報を提供するのがインスペクション出るという事がいえます。
③劣化診断で本当の価値がわかる
これはほんの一例ですが、実際に建物を調査してみると、建物には数ををあげればきりがないほど経年劣化という現象が生じています。ホームインスペクションはこのような劣化現象の度合いを冷静に診断する仕事になります。
消費者にとってはこれから買おうとしている住宅がどの程度痛んでいるのか補修する必要があるかどうかを判断する手助けとなります。
これから買おうとする住宅にどれほど損傷があっても立地や周辺環境や土地の条件などが良く 購入の価値があると判断すれば 補修費も覚悟の上で納得してその住宅の購入に踏み切るでしょう。
反対に立地や 条件がはあまり良くない けども 建物の保存状態が素晴らしいということであれば ある消費者はその物件に価値を見出すでしょう このようにホームインスペクションとは物件を購入するにあたりそのような 価値判断材料 を提供するということが 目的なのです。
オーナーは保険の活用を
ところでこのような中古住宅において保険の活用を忘れてはいけません 。
インスペクションの結果、数々の損傷や劣化事象が明らかになったとします。
特に自然災害にさらされている中古住宅においては劣化ではなく直接自然の猛威によって住宅が損傷する場合がありますその場合は 売主が火災保険に加入していれば、その保険で補償の対象になってきます 。 オーナーさんはこのような保険の活用も視野にいれることができれば、キャッシュフローの改善になります。
インスペクター(住宅診断人)の資質も問われる時代に
例えば住宅の劣化ではなく施工不良や施工不備で住宅に瑕疵が見つかったとします。
この場合も施工した工務店が 瑕疵保険に入っていれば保険で直せる対象になります。第三者でありながらも、このような判断を助言できかどうかは、今後のインスペクターの資質が試されると考えます。
単に客観的な調査データだけでは、家を直すことはできません。「それなら、どうすればいい?」というときに的確な第三者のアドバイスができるかどうかは重要です。
オーナーにおいても、自分で自己負担をする前に売主の火災保険で直すことができるかどうか、瑕疵保証が使えるかどうかと言ったことをインスペクターに求めていくのもいいでしょう。必ずしもインスペクターが保険の適用条件をしっているとは限らないからです。
まとめ
インスペクションが注目され、必要にされている理由は 不動産取引において、買主も売主も取引の中で、何も隠すことなく、家の状態を明らかにして見える化し、すっきりとしたいい取引をしましょうという情報化時代の流れでもあります 。
日本の住宅産業が飽和する中で、中古住宅流通を活性化させるターニングポイントになる住宅診断の普及をこのサイトでも後押ししてゆきます。